身近な感染症

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みずぼうそうとおたふくかぜワクチンについて

 これらのワクチンは任意接種で結構いいお値段です。うけるかうけないかの判断は「受けることによるメリットが費用や予防注射によって被るかもしれない危 険を上回る」ということを基本に考えればいいと思います。そしてこの「メリット」は家庭により価値が様々です。共働きの家庭ではこどものみずぼうそうのた めに10日間保育園にあずけられないというのは大変なことです。またせっかく楽しみにしていたお遊戯会を欠席しなくてはならないというのも可哀想なもので す。みずぼうそうで跡が残ってしまうことが気になる人もいますがあまりかまわないという人もいるでしょう。まれに起きる重大な合併症のことをのぞいても 罹っては困る度合いが違っているのです。
 さらにおたふくかぜやみずぼうそうの予防接種は麻疹などと違って有効率が低いのが問題です。接種後10年以内で発病を予防する効果は 70-80%くらいと言われていますから、10人注射してもそのうち2-3人くらいは罹ってしまうのです。ただその場合も軽くすむことがほとんどなので効 果がないというものではありません。でも罹ってしまったらなんか損したような気になりますね。
 予防接種後に自然のウイルスに接触しないでいるとだんだん免疫は低下していきます。そこで長く免疫を持続したいという場合は追加の接種が必要 になります。欧米ではMMR(おたふくかぜ、はしか、風疹)ワクチンは2回接種が義務づけられています。確実に予防したいという場合は追加接種をしたほう がいいでしょう。
 つぎに予防接種の副反応について考えてみます。みずぼうそうは含まれているゼラチンに対するアレルギーによるショックの可能性がありますが確率はごく低いものです。それ以外とくに多いと言われる副反応はありません。
 ところがおたふくかぜにはショックに加えて無菌性髄膜炎というやっかいな副反応があります。この確率はおたふく単独の場合一万接種に一度という確率ですが、以前中止になった日本製のMMRワクチンでは1200接種に一度という高さが問題になりました。
 これはおたふくかぜウイルスが本来持っている髄膜炎を起こしやすい性質によるもので、自然感染のおたふくかぜでは100人に一人くらいの割合で 髄膜炎になると言われています。ですからこの点でどちらが危険かという判断をするならやはり自然感染の方が怖いということになります。さらに自然感染で問 題なのはかなりの頻度で難聴になるということで、これはなってしまったら治療法がないということもあり是非さけておきたいものだと思います。大きくなって から罹ると睾丸炎を起こしやすくまれに男性不妊の原因になることもあります。
 こう考えてきますとおたふくかぜは軽くすめば出席停止期間が長いというくらいで大きな問題はありませんがこじれたときはやっかいな病気という ことになります。予防接種も副反応が多い割には効かないことも多いということであまり頼りにならないようにみえますが、予防接種をしていて罹った場合は軽 くすむのでこれらの合併症の確率は低いといわれています。
 これらを総合して考えますと現時点ではこの二つの任意の予防接種は受けておいたほうが総合的に見て得になるという判断になると思います。ただその損と得とのバランスは得が大幅に損を上回るというものではないようです。

<< 身近な感染症TOPへ戻る : 03年05月03日更新

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